―― AIが答えを出せる時代に、なぜ私は経営者との対話を大切にするのか

こんにちは。鈴木貴之です。

「AIがあれば、もうコンサルタントはいらないのでは?」

最近、そんな意見を見かけることがあります。
私は、この意見を必ずしも間違っているとは思いません。

実際、今のAIは非常に優秀です。

マーケティング戦略を考えることも、競合を分析することも、事業のボトルネックを探すこともできます。

商品設計や集客施策の提案、実行に必要な文章や資料の作成まで、かなりの部分を任せられるようになりました。

経営者自身がAIを使って適切な問題を設定し、必要な情報を与え、出てきた答えを検証して実行できるのであれば、外部のコンサルタントを必要としない場面は確実に増えるでしょう。

では、コンサルタントの価値はなくなってしまうのでしょうか。

私は、そうは考えていません。

ただし、その価値がどこにあるのかは、これまで以上に明確にする必要があると思っています。

先日、AIとのやり取りを通じて、そのことを改めて考える機会がありました。

「もう一度は行かないだろう」と思ったお店

先日、新しくオープンしたお店に行きました。

Instagramで紹介されているのを見て、「新しいお店ができたんだ。ちょっと行ってみよう」と思ったのがきっかけです。

店内には魚、果物、お菓子、コーヒーなど、さまざまな商品が並んでいました。
私は何か良いものがあれば買って帰ろうと思っていたのですが、結局買ったのはコーヒーだけでした。

しかも、飲みたかったからではありません。
何も買わずに帰るのは、ちょっと気まずいと思ったからです。

お店を出たとき、私は「たぶん、もう一度来ることはないだろうな」と感じました。

マーケターとして、私は自分がそう思った理由を掘り下げたいと思いました。
だからその理由をAIと一緒に考えてみることにしました。

話を進めるうちに、一つの仮説が浮かび上がってきました。

このお店には、顧客がわざわざここを選ぶ理由が十分にない、あるいは伝わっていないのではないか。

例えば、地元のお客様にとって、スーパーでも買える商品を、駐車場のないお店まで買いに行く理由は何でしょうか。

観光客を対象にしているなら、外から見たときに入りたくなる理由や、その場で買いたくなる商品が必要です。

ところが、少なくとも私には、そのどちらも十分に伝わってきませんでした。

もちろん、これは一人の顧客としての体験から立てた仮説です。
実際には人気商品や熱心なリピーターがいるかもしれません。

ただ、仮にこの診断が正しいとしたら、どのように改善すればよいのでしょうか。

AIは、すぐに改善策を考え始めた

AIからは、いくつかの改善案が出てきました。

例えば、地元客向けの手土産需要を狙うこと。
観光客向けの商品を充実させること。
塩竈ならではの商品を集めること。
店頭の見せ方を変えて、気軽に入れるようにすること。

どれも、それなりに合理的な提案でした。
でも、私はそこで疑問を持ちました。

「そもそも、このお店で今うまくいっていることは何だろう?」

例えば、すでによく売れている商品があるかもしれません。
特定の商品を目当てに繰り返し来店するお客様がいるかもしれません。
経営者自身が気づいていない、他店にはない強みがあるかもしれません。

それを調べずに、新しい方向性を提案してよいのでしょうか。

私は、まず今うまくいっていることを探し、それがなぜうまくいっているのかを理解したいと考えました。

そして、その成功パターンを横展開・縦展開できないかを検討する。
もし十分な実績がなかったり、成功要因を確認できなかったりする場合には、複数の仮説を立てる。

そのうえで、経営者が何を実現したいのかをヒアリングしながら、優先順位を決めていく。
そういう進め方がよいのではないかと、AIに伝えました。

AIも、その考え方に沿って診断の進め方を修正しました。

ここで、私は一つのことを考えました。

もし、このお店の経営者が直接AIに相談していたら、同じ結論にたどり着いただろうか?

AIは、質問されたことに答えるのが得意

例えば、ある経営者がAIにこう相談したとします。

「Instagramからの集客が弱いんです。どうすればよいでしょうか?」

AIは、さまざまな改善策を提示できるでしょう。
投稿内容の見直し、リールの活用、プロフィールの改善、予約への導線設計などです。
どれも有効な場合があります。

でも、ここで一つ考えてほしいことがあります。

そもそも、Instagramからの集客が弱いことが、本当に解決すべき問題なのでしょうか?

もしかしたら、既存顧客のリピート率が低いことが問題なのかもしれません。
あるいは、商品自体は優れているのに、その価値が顧客に伝わっていないのかもしれません。
そもそも、ターゲットとなる顧客がInstagramをあまり利用していない可能性もあります。

その場合、Instagramの運用を改善しても、期待した成果は得られないでしょう。

もちろん、AIもこうした前提を疑うことができます。

「Instagramの改善を考える前に、そもそもInstagramが適切な集客手段なのか確認しましょう」と問い返す能力は、すでに持っています。

ただし、AIが常にそのように応答するとは限りません。

相談された問題をそのまま受け取り、その解決策を提示することもあります。
今回の私とAIの対話でも、実際にそうしたことが起きました。

AIは合理的な改善案を提示しましたが、私はその前に確認すべきことがあると考えたのです。

では、経営者がAIに正しく質問すればよいのでは?

その通りだと思います。

例えば、経営者が最初から、

「私が問題だと思っていることを、そのまま正しい問題設定だと考えないでください。まず根本原因を疑い、既存の成功パターンや未活用の経営資産を調べ、複数の改善仮説を提示してください」

とAIに指示したらどうでしょうか。

かなり高度な診断ができるはずです。

さらに、経営者が自分の事業を客観的に分析でき、AIの回答を検証し、適切な意思決定ができるのであれば、コンサルタントの必要性は小さくなるでしょう。

私は、それでよいと思っています。

AIで十分に解決できることに、わざわざコンサルティング費用をかける必要はありません。

では、どんな経営者にコンサルタントの価値があるのでしょうか。
私は、ここに重要な違いがあると考えています。

そもそも、何を質問すべきなのかがわからない経営者です。

経営者自身が、問題に気づいていないことがある

例えば、非常に良い商品を作っている経営者がいたとします。

商品には自信があります。
実際に購入したお客様からも喜ばれています。

でも、思うように売上が伸びません。

経営者は「もっと知ってもらえれば売れるはずだ」と考え、Instagramを頑張り始めます。

しかし、成果が出ません。

そこでAIに「Instagramの集客を改善したい」と相談します。
でも、本当の問題は、Instagramではないかもしれません。

商品を購入しているお客様が、なぜその商品を選んでいるのか。
競合商品と比較して、何に価値を感じているのか。
どんな状況になったとき、その商品が必要になるのか。

そこが明確になっていないことが問題なのかもしれません。
ところが、経営者自身はそのことに気づいていません。

自分の商品については、毎日考えています。
だからこそ、当たり前になってしまっていることもあります。

例えば、購入前に丁寧に相談に乗ること。
一人ひとりに合わせて商品を調整すること。
購入後も細かくフォローすること。

経営者にとっては、ごく普通の仕事かもしれません。
でも、お客様にとっては、それこそがその会社を選んだ理由かもしれないのです。

私は、こうした価値を見つけることを大切にしています。

もちろん、必ず強みが見つかるとは限りません。
本人が強みだと思っていることが、実際には競合と変わらない場合もあります。

だからこそ、経営者の話だけでなく、顧客の声や実際の購買行動などから確かめる必要があります。

強みを作り話で生み出すのではなく、すでに存在する価値を発見する。

そこが重要だと考えています。

問題を解決する前に、問題を見つける

私は、経営相談を受けたとき、相談された内容をそのまま解決すべき問題だとは考えないようにしています。

もちろん、経営者の悩みは大切です。
ただ、その悩みが表面的な症状である可能性もあります。

例えば、「Instagramからお客様が来ない」という相談の背景には、「そもそも誰に何を売るべきかが定まっていない」という問題があるかもしれません。

「価格競争になってしまう」という相談の背景には、「顧客が本当に評価している価値を伝えられていない」という問題があるかもしれません。

「新規顧客が増えない」という相談の背景には、「既存顧客からの紹介が生まれる仕組みを活用できていない」という問題があるかもしれません。

大切なのは、最初に相談された問題を否定することではありません。
その問題がなぜ起きているのかを、一緒に考えることです。

そして、問題ばかりを見るのではなく、すでにうまくいっていることにも目を向ける。
そこに、事業を伸ばすための資産が隠れている可能性があるからです。

私が考えるコンサルタントの仕事

ここまで読むと、「それなら、AIにこうした診断をするよう指示すればよいのでは?」と思う方もいるでしょう。

その通りです。

AIは、経営者との対話を通じて、問題の発見や強みの言語化を支援できます。
私自身、コンサルティングの仕事でAIを積極的に活用しています。

市場調査、競合分析、仮説の検討、商品設計、販促物の制作など、AIを活用できる場面はたくさんあります。

だから私は、「AIにはできないことを人間がやる」という単純な分け方はしていません。

私が大切にしているのは、経営者と一緒に、何を実現すべきかを考え、それを実現するところまでつなげることです。

経営者が相談してきた問題は、本当に解決すべき問題なのか。
すでにうまくいっていることはないか。
まだ活用できていない資産はないか。
顧客は何に価値を感じているのか。
競合と比較して、どんな人にとって最善の選択になれるのか。

そうしたことを対話の中から探っていきます。

そして、方向性が見えてきたら、商品設計、価格、集客、販売導線などを一貫して考え、実装につなげます。

必要ならAIも使います。
大切なのは、AIを使うかどうかではなく、経営者が望む成果に近づけるかどうかです。

コンサルタントなら誰でもよいわけではない

一方で、AIの普及によって、コンサルタント自身も厳しく評価されるようになると思います。

例えば、経営者が「Instagramの集客を改善したい」と相談したときに、投稿回数を増やすことしか提案できないのであれば、AIで十分かもしれません。

経営者が自分でAIに質問すれば得られるような一般論を伝えるだけなら、外部の専門家に依頼する意味は小さくなります。

もちろん、SNS運用の専門家が不要になるという話ではありません。
実際に成果を出せる専門家には、引き続き価値があります。

ただし、その施策が本当に必要なのかを判断することと、その施策を上手に実行することは、別の仕事です。

私は、後者の専門性を否定するつもりはありません。
むしろ、必要に応じて専門家の力を借りるべきだと考えています。

その前に、何を優先すべきかを判断する。

そこを間違えれば、どれだけ優れた施策でも、期待した成果につながらないことがあるからです。

AI時代だからこそ、経営者との対話を大切にしたい

今回、AIと新しいお店の問題を考えていたとき、私は何度かAIの提案に疑問を投げかけました。

その結果、単なる店舗改善案の話から、事業の目的、既存の成功パターン、顧客の需要、経営者の意向をどう結びつけるかという話に発展しました。

もし私がAIの最初の提案をそのまま採用していたら、そこまで考えなかったかもしれません。

逆に、私自身もAIとの対話によって、考えを整理し、深めることができました。

私は、AIと人間を対立させる必要はないと思っています。
AIが得意なことはAIに任せればよい。

そのうえで、経営者との対話から、本人がまだ気づいていない価値や可能性を発見する。
そして、その価値を顧客に選ばれる理由へと変え、実際の事業改善につなげていく。

それが、私の目指しているコンサルティングです。

もちろん、経営者自身がAIを使って同じことを実現できるなら、私に依頼する必要はありません。

それでも、
「何が問題なのか、よくわからない」
「いろいろ試しているけれど、成果につながらない」
「自分の商品には自信があるのに、なぜ選ばれないのかわからない」
「今の事業をもっと伸ばしたいけれど、どこから手をつければよいかわからない」
「AIに質問しているけど、回答がいまいち/回答通りにやっても結果が出ない」

という経営者は、少なくないのではないでしょうか。

そうした方と一緒に考え、今ある価値を見つけ、事業の可能性を広げていく。
そこに、私が提供したい価値があります。

最後に、経営者の皆さんへ

AIは、質問すればさまざまな答えを返してくれます。
でも、あなたが今抱えている問題は、本当に解決すべき問題でしょうか。

そして、あなたが当たり前だと思っていることの中に、まだ十分に活用できていない価値はありませんか。

もしかしたら、今よりもっと集客を頑張る必要はないのかもしれません。

すでにあなたを選んでくれているお客様が、なぜ選んでくれたのか。
その理由を理解することから、新しい成長の可能性が見つかるかもしれません。

私は、そうした可能性を経営者の皆さんと一緒に探していきたいと考えています。

AIに何を聞けばよいのかわからなくても構いません。

今、何に困っているのか。どんな事業にしたいのか。何を大切にしているのか。
まずは、そこからお話を聞かせてください。

問題を整理するところから、必要な改善策の設計、実行まで、一緒に考えていきます。

やってみてほしいこと

最近、あなたの商品やサービスを購入してくれたお客様を一人思い浮かべてみてください。

そして、こう問いかけてみてください。

「そのお客様は、なぜ他ではなく、うちを選んでくれたのだろう?」

もし答えがわからなければ、実際に聞いてみてください。

あなたが思っている強みと、お客様が感じている価値は、違っているかもしれません。

その違いの中に、次の成長のヒントが隠れている可能性があります。


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